私のルームメイトは空を見上げることが好きなインド人でした。
朝起きるとすぐブラインドを上げてまず空を眺めます。
そして夜寝る前も同じように空を見上げて、「明日はきっと雨だよ」などと教えてくれました。
毎日の習慣で、夜の天気から翌日の天気が分かるようになったそうです。
天気だけでなく、彼女は星や月の知識も豊富でした。
スマホを空にかざすとその日見える星が表示されるアプリを教えてくれ、一緒に「ほら、これがあの星だね」、「晴れていたらこの星が見えたかな」と話すこともありました。
綺麗に月が見える日や、虹が出た時は必ず私を呼んでくれ、窓辺に座って何十分かの間彼女が流してくれるインドの有名な音楽をバックに空を見る時間が好きでした。
一緒に出掛けたことは片手で数えられる程度だったものの、4カ月半同じ部屋で過ごした彼女の存在は留学生活の中で大きいものでした。
初対面で他言語の誰かと過ごす日々は常に緊張感があり、しばらくは苦痛に感じるものでした。そして初めはインドなまりの英語に苦戦し、話しかけてくれても大半を理解できずあいまいな返答で会話を終わらせてしまうことがほとんどでした。
しかし、「空を見ることが好き」という共通点から仲が深まり、次第に遠慮がなくなっていったように感じます。
かわす言葉は多くなくても、必ず毎晩「Good night」と言ってくれることも実は嬉しかったことの1つです。
お別れ前に彼女がくれた手紙の一節には、「You like to watch sky is great that is one of common thing we have. I had best time watching rainbows, sunsets and moon with you.」と書かれていました。
終わり際になってようやく、今自分が体験していることの尊さに気づくことができました。
異国の地で多言語の世界に溶け込むことはとても難しいけれど、こんな経験は誰もができることではありません。
初めてのシェアルームメイトとして何度も一緒に空を見上げてくれた彼女、つらく寂しいときに寄り添ってくれた友人、この機会を作ってくれた家族に感謝しています。
最後に、お別れの前々日に彼女がプレゼントしてくれた手作りのインドの伝統スイーツを添えます。
人参、クルミ、生姜風味のカルダモンが材料で、上にアイスクリームを乗せて食べる事も多いそうです。
またいつか会えるときは、きっと前よりもっと素の自分で話せると思います。
S.I