歴代の学科主任報告
消費情報環境法学科がスタートして ~学科主任の覚書~
平川 幸彦
本年4月に、法学部に昼夜開講制の消費情報環境法学科がスタートした。学部長をはじめとして、新学科の教員は、新学科のため長期間準備し、その開設を首を長くして待っていたので、4月1日の入学式は大きな喜びであった。また入学式の後、新学科の学科ガイダンスに集まった新入生の顔を見て、各教員は新学科のスタートを実感するとともに、深い感動を覚えた様子であった。
第1回の入学者は、昼間主98名、夜間主34名で、入学者総数は132名であった。同学科の定員は、昼間主75名、夜間主75名であるから、入学者総数は総定員より18名不足のスタートとなった。また昼間主の入学者数は定員より23名多く、夜間主の入学者数は定員より41名少なかった。
新学科にとってはじめての入試を、昼間主について総括すれば、一応、満足できる結果ということができるだろう。なぜなら文部省が昨年10月に消費情報環境法学科の新設を認可してから、2月の入学試験まで5ケ月ほどの時間しかなく、十分な広報活動ができなかったにも拘らず、昼間主には定員の7倍の受験生が集まり、合格後の定着率も法学部の法律学科や政治学科の定着率を大きく上回ったからである。新学科に対する受験生の関心と期待は高かったのであろう。しかし夜間主については、反省点は少なくない。殊に、夜間主というネーミング自体が悪かったせいなのかもしれないのだが、夜間主は昼間主と中心となる履集時間帯が異なるだけで、従来の2部のように夜の6~7限だけが履修可能なのではないことを、受験生に周知徹底できなかった。また夜間主は社会人が入学しやすい環境を準備したにもかかわらず、広報活動が不十分で、社会人の応募はさほど多くなかった。これらは、今後、十分な対応が必要であろうと思われる。
さて、新入生は、どのような学生生活を送っているのだろうか。まず最初の関門は、4月中旬の履修登録である。履修要項や講義概要に掲載されていない情報、例えば、どのような時間割を組めば最も効率的にサークル活動やアルバイトができるか、どの先生の講義が学生に人気があり、また単位が容易に取得できるか等は、新入生は、通常、先輩から教えてもらうのであろうが、残念ながら、新学科には、まだ先輩はおらず、当初、新入生は、相当、混乱したようである。
教務課からは次のような指摘があった。夜間主の学生は、語学と情報処理は、クラス定員との関係で、原則として白金校舎で履修することになっているが、横浜校舎での履修を希望する学生が多いとの指摘である。この点は、横浜校舎で語学や情報処理を担当される先生方の御理解もいただき、幸いすべて学生の希望をかなえることができたが、問題は思わぬところにあった。それは社会人の学生からの指摘であったが、社会人学生は英語の勉強から離れて久しく、基本的事項を忘れている人が少なくなく、高校を卒業したての新入生を対象とした英語の授業では、十分な教育効果が得られないというのである。新学科の入試において、社会人の受験生には外国語の試験を課していないことを勘案すると、この指摘は理解できるものであったが、残念ながら、今年度は対処の仕様がなかった。来年度以降の課題とさせていただきたいと思う。
新入生は、履修登録の後、5月中旬には、法学部の法律学科の学生と一緒に、フレッシャーズ・キャンプに参加した。東京ディズニーランドそばのヒルトン・ホテルに一泊して、刑法に関する映画を見たり、先輩の学生が演ずる寸劇を見て、法的な問題点は何かと考えたり、ゲームをしたりと、楽しい一日を過ごすことができた。翌日、希望者は東京ディズニーランドヘ行くこともできたので、学生は大いに満足したようであった。また新入生は、自分達の面倒を一生懸命に見てくれた法律学科の上級生を見て、何か感ずるところがあったのではないかと思う。フレッシャーズ・キャンプのような学校行事を通じて、人のために尽くすという明治学院大学の伝統が継承されていくのであれば、担当した教員の苦労も報われることだろう。
私はこのフレッシャーズ・キャンプで、新学科の学生と、新学科の基礎科目となっている情報処理の学習について話す機会を得た。そこではじめて知ったのだが、高校によっては、コンピューターを使った授業を全くやらない学校があるようである。高校にコンピューターは置いてあっても、コンピューターを使った授業を受けることができるのは理工科系の学生だけという例も、少なくないらしい。私と話した新学科の学生も、大学入学までコンピューターは触ったことがなく、大学での情報処理の学習が大変だとこぼしていた。
この件は私にとってショックだった。私は新入生は、高校までに何らかの形でコンピューターに接しており、全くの素人はほとんどいないだろうと高をくくっていたからである。その後6月下旬に、新学科の先生方の懇談会を催したが、やはりその席でも、情報処理担当の先生方は、新学科の学生は非常に熱心に学習すると評価されながら、他方で、情報処理の初級クラスについて、コンピュータに全くの素人の学生が少なくないこと、また初級クラスばかりではなく中級クラスや上級クラスにおいても、学生の実力の差が大きいとのことであった。先生方の御努力もあって、幸いパソコン嫌いになった学生はいないようであったが、来年度はクラス編成に工夫をこらすとともに、情報処理1~3の時間割の編成にも注意することにした。
以上、思いつくままに、新学科および新学科の新入生のことを述べたが、新学科も、今後、学年を重ねるごとに、上級生と下級生の間で、情報が蓄積され共有されて、多くの問題が解決されて行くと思う。私はそのためにも学生同士、コンピューターでメールのやりとりをしてくれたらと思う。そしてメールを活用して法律の議論をし、議論のための情報をインターネットで検索できるようになったら、とりあえず新学科の学生としては、及第点なのだと思う。