歴代の学科主任報告

二年目を迎えた「消費情報環境法学科」

河村 寛治

昨年4月にスタートした消費情報環境法学科のその後はどうであろうか。二年目の入学者数も昨年と同様ほぼ期待通りであった。昨年とは異なり、今年の受験生にとっては、一年の実績のある学科であり、十分な宣伝なども行なわれたはずである。しかし、夜間主コースでは、履修の非常にフレキシブルなコース設定がされているにもかかわらず、昼間主コースと比べると受験生の人気は今ひとつというところであった。この反省も踏まえ、名は体を現すということから、来年度からは、スタンダード・コースと白金インテンシブ・コースと変更されることとなった。従来の夜間主コースである白金インテンシブ・コースは、一年次から卒業まで白金校舎で履修をしながら学べるとともに、横浜校舎での履修も可能であるという便利なコースである。

消費情報環境法という長い名前でパソコン上で検索するとまず最初に本学科が見つかるというように 日本でも非常に新しい学科であり、また自分のパソコンを利用しながら授業をうけることができる法学部というのもまだ珍しいようである。最近の世の中は、IT革命やインターネットという言葉が身近に氾濫しており、あらゆるものにコンピュータが利用されるようになってきた。若者や学生を中心として携帯電話が普及し、いまでは携帯電話はその本来の役割の通話をするというよりは、メールのやりとりやインターネットも見ることができるようになってきている。そのうち携帯電話で画像付の通話(いわゆるテレビ電話)ができそうである。そのうちにテレビ電話ができるようになると言われていたのが、携帯電話の普及や技術の進歩によりその実現がより現実的となってきたようである。今は電車のなかなど無言で無表情で携帯電話でメールを見、メールを送るという光景を目にするのが普通となったが、そのうちにっこり笑いながら、携帯電話を覗き込んでいる様子を想像すると少し気味が悪い気がする。かつては街を独り言を言いながら歩いている人を見るとすこし怖かったのであるが、それが今は一般化してしまい、独り言を言いながら歩いている人をみても驚かなくなってきた。

このような世の中になり、ますます情報機器を自由に扱うことができるようになるというのは大変な武器であり、また凶器ともなりうる。これらの情報機器の使い方次第では、そのインターネットという匿名性や誰もが情報の発信者となることができるという便利さから、他人の信用やら名誉などを気付かずに侵害するようなこともおき、また、意図的に個人や特定の者を攻撃することも可能となる。今までのように情報の発信者が限定されていた時代にはない新たな法律問題も発生しているというのが現状であろう。このような新しい時代に対応した法律問題も学ぶことができるわけであり、これを視野にいれて、教育や研究をしていく環境下にあるのが、本学科である。

一方、情報機器が利用できず、またインターネットができないため、情報へのアクセスが少なくなり、多くの情報量に接することのできるものとの格差が大きくなるといわれているデジタルデバイドの問題は、これからの世界のなかでも深刻で重要な問題であるとされているが、本学科の学生にとっては無縁の心配事であろう。パソコンにまったく素人であったものも、また既に経験してきたものも、一年過ぎれば、ほぼ皆がパソコンを利用し、情報検索や情報収集なども学内のネットワークに接続して行なうことができるようになる。

つまり、今の情報化時代の動きに沿った大学生活が送れるというものである。そのなかでも二年次から導入される法情報処理演習という少人数のパソコンを各自が使いながら行なう演習は、単なる情報処理技術を習得するだけでなく、法学部学生として必要な法情報の収集やその整理やら、それを利用した情報発信という現在において最も要望されている、能力を身に付けることができるとともに、現代の新しい法律問題を学べるという少し欲張った内容のものである。第一期生の感想としては、従来の法律学科とは違い、現代の法律問題を中心に社会に出たときに実践的な知識として活用できるものを学ぶことができ、また消費情報環境法や企業と環境、環境倫理などの講義からも従来より多角的な視点で物事が捉えられるようになったと言っているものも多い。

このように情報に身近な形で法を学んでいく学生に対して、教授陣のほうも、情報機器を利用した講義資料の作成やら、ネットワークを利用した授業の実践やらを試行錯誤をしながら努力されている様子が伺われ、学生の情報処理能力だけでなく、先生方の情報処理能力も一層向上しているのではないかと思う次第である。

学科としては、このような学生の学習や先生方の研究・教育活動に対して、少しでも役に立つようにということで、法学部のホームページのなかの消費情報環境法学科のページ(http://www.meijigakuin.ac.jp/~cls/)をこの6月に刷新し、通常の学科紹介や教員紹介だけでなく、学生が携帯しているパソコンの保守関連の情報や、利用可能な法律関連のリンク集、インターネット関連の新たな法情報や、学生に読んでもらいたいという本の紹介記事など、幅広い情報提供の場所としての機能の拡充も行なってきている。また、講義で使用する教材は、別途CD-ROMに焼き付けて毎年学生に配布しており、今年は特に有斐関の法律学小事典をCD-ROMに焼きつけ、パソコン上で法律用語の検索なども自由に行なうことができるようになっている。

このように消費情報環境法学科は、時代が要請する新しい法学教育を目指し、それを実現しつつあると言うことができるのではないかと期待している。来年度からは、より専門性の高い講義も履修していくことになり、また先生方も授業のやり方を工夫されていることから、今までのような一方通行の講義は段々と少なくなっていくのではないかと期待する一方で、情報機器に振り回されず、自分の頭で考えるような学生になって欲しいと願っている。いずれにしてもどのような学生か巣立っていくのかますます楽しみになってきた。