歴代の学科主任報告
消費情報環境法学科の近況
宮地 基
1.主要科目群をめぐるこの1年間の法制度改革の動き
近年、法制度改革が急速に進行しており、本学科の主要科目群にも大きな影響が及んでいます。学生が携帯する小型六法は、毎年目に見えて厚くなり、六法の編集作業が間に合わないために、最新の六法を持っていても新しい法律の学習に支障がでる事態も生じています。本学科が特徴としているコンピューター技術による最新法情報の収集と学習が大きな力を発揮する時代になったといえます。
法律基礎科目群の分野では、約50年ぶりに民法が全面改正され、これまでカタカナ・文語体であった条文が、読みやすいひらがな・口語体に改められました。これによって、かつて法学初習者が悩まされた「囲繞地」、「溝渠」といった難解な用語、「責ニ任ス」といった独特の言い回しが姿を消すことになりました。同時に、債務の保証人が過大な負担を負うことがないように、保証契約を必ず書面で行うようにする、保証限度のない根保証契約は無効とするなどの適正化措置が講じられました。
消費者法科目群の分野では、2004年にそれまでの消費者保護基本法を全面的に改正した消費者基本法が制定されました。この法律では、消費者の権利の尊重と自立の支援を図るため、政府が消費者基本計画を定めることとされており、この基本計画が本年4月に閣議決定されました。この基本計画の中には、悪徳商法に対してなかなか裁判にまで踏み切れない一般の消費者に代わって、十分な資格と能力を持った消費者団体が不当な行為の差し止めなどを求める裁判を起こすことを認める「消費者団体訴訟」制度の導入を検討することも盛り込まれています。
環境法科目群の分野では、1997年12月に京都会議で採択された地球温暖化防止に関する京都議定書が、発効条件となる所定の数の国家による批准を得て、ようやく本年2月に発効しました。京都議定書については、世界最大の温室効果ガス排出国であるアメリカが批准していない、発展途上国に十分な義務が課せられていないなどの問題点も指摘されていますが、議定書が法的効果を持ったことによって、日本などこれを批准した先進国は議定書で約束した温室効果ガス削減の数値目標を達成する義務を負うことになり、この問題の改善に向けて世界は大きな一歩を踏み出すことになりました。
カリキュラム上は法律基礎科目群に分類されていますが、企業法科目群に最も大きな影響を及ぼすと考えられるのが会社法の制定です。会社に関する基本的なルールは、これまで商法の第2編「会社」の部分、有限会社法、さらに商法特例法などによって定められていましたが、これらを再編成して統合し、「会社法」という新しい法典が作られたのです。新しい会社法では、これまでのカタカナ・文語体を改めてひらがな・口語体にしたほか、会社設立に際する最低資本金の規制を撤廃して株式会社と有限会社の区別をなくしたり、会社経営の機動性・柔軟性・健全性を図るため、会社の組織再編、資金調達、内部統制などの面で大幅な改革が行われています。
2.カリキュラムの動き
昨年度、大幅に変更したカリキュラムですが、このような近年の改革の動きに対応するため、今年度もカリキュラムにいくつかの改革を加えました。来年度から実施される改革も併せてご紹介します。
まず、学科基礎科目群の分野では、コンピューターネットワークを活用した法情報の収集とその活用方法を学ぶ「法情報処理演習1」「法情報処理演習2」の配当年次を変更し、「1」は1年次の秋学期に、「2」は2年次に配当することとしました。法情報処理演習を学ぶためには、パソコンや基本的なプログラムの操作ができることが必要なので、これまでは1年次の「情報処理」でパソコンの基本操作を学んだあと、2年次で「法情報処理演習1」を学ぶことになっていましたが、最近では高校段階でほとんどの生徒が情報処理を学んでおり、パソコンの基本操作に習熟しているため、少しでも早く本学科の学生にとって必須の技術であるネットワークを通じた法情報の収集を学んでもらうことにしたのです。また、これによって1年次から3年次まで切れ目なく少人数制による「演習」科目を配置できることになりました。
法律基礎科目群の分野では、会社法の大幅な改革に対応して会社法科目の単位数を増やし、会社法1~3の合計6単位としました。また民法の効果的な学習のため、各科目の履修順序を大幅に見直し、1年次春学期の「契約法の基礎」に引き続いて1年次秋学期からは「契約法1」による本格的な契約法の学習を開始します。これに伴い、「民法総則」「物権法」の履修を従来よりも半年遅らせて、総則は1年次秋学期から、物権法は2年次秋学期から開始することになります。
消費者法科目群の分野では、これまで「消費者取引特別法」「製造物責任法」「マンション法」のように、法律の種類ごとに独立した科目とされていたものを改め、「消費者取引特別法1~3」に統合しました。これは、急速に発展している消費者法分野の法制度に対応して、科目の教育内容を毎年柔軟に変更することができるようにするためです。
環境法科目群では、急速に拡大している地球規模の環境問題に対処する様々な国際的法制度を学ぶために、「国際環境法2」を新たに設置しました。この分野の学習は、従来の2単位だけの授業では明らかに不十分になってきたのです。これに加えて、今年度から「法律学特講」の一つとして、「世界の環境を考える1」「同2」を開講しています。この科目は、東京に本拠を持っている国連大学と提携し、国連大学で世界の環境問題の研究に取り組んでいる各国の若手研究者に交代で講師として来学してもらい、現代の最先端の環境問題を学ぶものです。講義は英語で行われますが、日本人講師が常時同席して、講義内容の解説や質疑の通訳を行っています。
3.ホームページの改訂
消費情報環境法学科では、これまでも学科教材CD-ROMの活用など、電子データによる学生への情報提供に取り組んできました。これに加えて、本学科への進学を希望する受験生など広く外部の方々に学科の最新情報を提供するため、学科のホームページを大幅にリニューアルしました。これまでは、法学部のホームページの一部として学科の基本的な情報を掲載していただけでしたが、今年度からは独立した学科のホームページとして、学科の最新情報を機動的に掲載できるようになりました。デザインも一新して、センスが良くて見やすいホームページになっています。今後はさらに内容の充実をはかっていきたいと考えています。アドレスは、https://www.meijigakuin.ac.jp/academics/faculty/law/current_legal_studies.htmlです。アクセスをお待ちしています。