消費情報環境法学科開設20年周年に寄せて
消費情報環境法学科所属 大木 満
2000年4月、消費情報環境法学科は、周知のように、2部法律学科を改組し、昼夜開講制(昼間主コース75名、夜間主コース75名)とするため開設された学科である。その際、斬新で特徴的な学科とするため、現代社会が直面する法的問題を、①消費者の利益をどう保護するかという消費者法の問題、②消費者が対峙する企業に関わる企業活動法の問題、③消費者を取り巻く環境に関わる環境法の問題として捉え、これら3つの法領域を束ねるコンセプトを持った学科として考え出された。また、他大学にはないユニークな学科の起ち上げを目的として、現代社会の重要なツールであるコンピュータを法学教育に取り入れ、理系の学部のない本学の中でそうした要素を取り込んだ新しい学科とすることとした。加えて、設立当初においては、法学系の学科では少人数教育は一般に限られていたところ、先駆け的な試みとして、「情報処理」、「法情報処理演習」、「消費者法演習」、「演習」等々と少人数教育の授業を多く採り入れた。
また、消費情報環境法学科の法学教育面での特徴としては、従来の法律学科が法律を体系的に学び、基礎から応用へと積み上げて行く方式であるのに対して、目に見える具体的な法的問題(しばしば応用的で先端的な問題) をきっかけに、現実の法律に対する関心も持ってもらい、そこを起点として、基本的な法律科目を学ぶとともに、先端分野の法律を学び、現代の法律問題をいかに解決するのかを具体的に学ぶという観点に立っている点である。それと関係して、現代社会の問題を消費者の目線から、より実践的に学ぶため、とくに消費者法分野において理論と実務の融合を図ったカリキュラム(消費者法の実務、消費者法演習、消費関連のインターンシップ、公開講座、消費者関連の資格取得のための課外講座等)を構築し、その充実化に取り組んできた。
こうして創設された消費情報環境法学科は、今年20周年を迎えた。この間、消費情報環境法学科の取り組み内容は、一定の成果を上げてきた(例えば、卒業生の多方面にわたる活躍等)。そのことは、本学科の先駆け的試み(消費者や環境と企業に関連する法的問題についての体系的カリキュラム、法学部におけるコンピュータ教育や少人数教育の重視等)が、今日では、他大学でも見られるようになってきていることからもうかがうことができよう。
今後は、現代社会において生起する先端分野の法律問題を学習の中心とする本学科の特性から、社会の変化に応じて柔軟にカリキュラムや教育体制を見直す必要がある。とりわけ、今日のコンピュータ技術や情報通信技術の進展はめざましく、現代社会の多方面に影響を与えている。ネット取引における消費者問題、個人情報の保護やネットによる名誉棄損の問題、不正アクセスやデジタル情報などの情報自体の保護の問題、サイバー犯罪の問題等々、情報やネットワーク、コンピュータ技術をめぐる法的問題は無視できない一大領域となってきている。新たに設けられた「AIと法」という科目は、こうした流れに沿ったものであるが、消費者法、環境法、企業法の3本柱に、情報やコンピュータ技術等の科学技術に関連する法領域(情報や科学技術をめぐる法)について充実したカリキュラムの編成を追加していくことも必要かもしれない。
消費情報環境法学科が10年後どのような学科になっているか楽しみである。