消費情報環境法学科設立20周年に寄せて

消費情報環境法学科所属 酒井 一博

私が明治学院大学に来たのは2015年4月なので、今年で6年目になります。学科設立の経緯や設立当時の様子については、当時を知る方からの伝聞や10周年記念Webページに寄せられた記事から知るのみですが、学科立ち上げに関わられた先生方の大変なご尽力と、教職員および敢えて新学科に入学してきた意欲的な学生の間の活発なコミュニケーションによって、本学科の自由な雰囲気が次第に醸成されていったことが窺い知れます。

私は専門が法学ではなく物理学ということもあり、本学科の学生と直接関わるのは、主に情報処理1の授業を通じてということになります。そこで情報処理教育という観点から学科の変遷を眺めますと、当然ながら近年の情報通信技術の目覚ましい進展の影響は大きく、大きな変化を目の当たりにします。研究に毎日コンピューターを必要とする私のような研究者であっても、自前のノートパソコンを手にしたのは2003年のことでしたから、学生全員がノートパソコンを携帯するという本学科の一つの特徴が、設立当初いかに先進的だったかが分かります。現在では本学科に限らず、大学生が自分のノートパソコンを持つのは当たり前の世の中になりました。設立当初はユニークな試みだったであろう学科教材CD-ROMも、2016年度の配布を最後に廃止となりました。

より本質的なところでは、「情報処理1」が目的としている入門編としての情報処理教育は、単なるパソコンやアプリケーションソフトの操作法の実習から、インターネット社会上での立ち居振る舞い方の教育に、大きく重点が移ってきていると思います。実際、情報処理1の授業では、文書作成ソフトとしてMicrosoft Wordを用いた実習を行いますが、授業で接する学生のほとんどは、初めから、あるいは授業を通じて、難なくWordの操作を身につけています。一方で、コンピューターやネットワークの成り立ちに関する基本的なことや、メールの書き方に始まるインターネット上の慣習、情報セキュリティの考え方に関しては、私の世代あるいは社会人にとってはごく当たり前と思われることであっても、現在の学生にとっては意外とそうではない事柄もあったりして(逆もまた然りなのでしょうが)、総合的な基礎教育の重要性を実感しています。法学と私が専門とする物理学とは、分類上は対極とも言える位置にありますが、共通するのはどちらも非常に体系だった学問分野であるということです。大学で学ぶことの大きな意義は、物事を体系立てて学べるという点にあると思います。情報処理1の授業においても、移ろいやすい流行りの情報通信技術への習熟で満足するのではなく、今後の技術の進展とそれに伴う社会状況の変化に適応できるような、体系だった知識の基盤を学生に身につけてもらえるよう、考えて参りたいと思います。

最後に、JCの学生と情報処理1の授業に関するやや個人的な思い出を記します。着任初年度のことですが、学生達は同じ学科同士で週を追う毎に互いに気心が知れてくるのに加え、私が初めて担当する科目に不慣れなことも見越してか、授業中は私が話している間も大変に賑やかでした。あちらこちらで湧き上がるおしゃべりの芽を、モグラ叩きのごとく潰すことにだいぶ気を取られて、あまり満足の行く授業を提供できなかったという反省点があります。それでも、授業でなかなかに手を焼かせてくれた学生複数名が、いずれも卒業式でわざわざ挨拶に来てくれたのは、非常に励みとなりました。

今後も学生の成長と学科の発展に少しでも役立つことができればと思います。