消費情報環境法学科開講科目「国際環境法」を担当して

グローバル法学科所属 鶴田 順

消費情報環境法学科設立20周年、誠におめでとうございます。お祝いを申し上げます。

消費情報環境法学科開講科目「国際環境法」を担当して5年目になります。国際環境法は地球規模あるいは国際的な広がりを有する環境問題に対処するための国際法規範です。最近の学生たちの関心のある環境問題は、地球温暖化問題(パリ協定の実施、日本や中国による温室効果ガスの排出削減、脱炭素ビジネス)、これからの日本の電源構成(再生可能エネルギー、石炭火力発電と原子力発電の行方、放射性廃棄物の処理)、自然災害の大規模化・頻発(海水温の上昇、台風の巨大化、河川の氾濫、森林火災)、海の汚染(プラスチックごみ問題、船舶座礁による油流出)、海洋生物資源の持続的利用(サンマやウナギ稚魚の不漁)などです。

授業では、国際環境法とそれをふまえた日本の国内法の両方を視野にいれて、上記のようなさまざまな問題状況の防止・改善・克服に国際環境法がいかなる役割を果たしているのか、その限界や今後の課題も含めて、ていねいにみていきます。

国際法と国内法、法・政策と科学・技術、法規範と具体的な問題状況の防止・改善・克服、日々の生活と地球規模の問題状況。自分でこれらのつながりを認識できるようになったり、自分で整理しながら「つなぐ」ことができるようになること。学生たちがそのような力をつけてくれることを目標にして授業を進めています。

授業ではさまざまなことを敢えて未整理のままに話したうえで、すこしずつつないだり、最後に一気につないだりします。知的に相当タフでないと耐えられない授業だと思いますが、履修者は年々増えています。約半数が消費情報環境法学科所属の学生です。「難しいけれど楽しい」と言ってくれる学生たちには感謝しています。本年4月にはこれまでの授業の成果を盛り込んだ教科書を刊行しました。西井正弘先生(京都大学名誉教授)との共編著『国際環境法講義』(有信堂高文社)です。

社会で起きている具体的な問題の防止・改善・克服に関心をおきながら、国際法を広く・深く学び、これまで捉えることができなかった対象が捉えられるようになり、働きかけの方向性がつかめ、少しでも「より良い」問題解決を図り、少しでもより良い社会を構想し実現していく。本学における国際法の学びが、これからの日本を支えていく方々の主体的な営みにとって何らかの支えになればと思います。