消費情報環境法学科設立20周年記念によせて
明治学院大学名誉教授 黒田 正明
消費情報環境法学科が、今年、設立20周年をむかえました。元教員として心からお祝い申しあげます。私は、設立の2000年から定年で退職するまで15年間、この学科にお世話になりました。設立当初は、法科大学院関連の問題もあり、種々の苦難があったように思いますが、法学部の多くの先生方のたゆまぬ努力によって、その後順調に地歩を固め、全国的にもユーニークな学科としてその地位が確立されたことは、元教員にとっても、大きな喜びであります。
学科の初年度の学生はもう40歳近くになっていて、中堅として社会で活躍しているわけですから、人間の一生のスパンで見ると、20年はかなりの時間になります。20年前のインターネット環境は非常に貧弱で、私が担当していた「情報処理」の授業では、学生がインターネットに接続できるようになる練習をしたものでした。
今年はコロナ禍の影響でできませんでしたが、今でも年に一度、以前のゼミ生たちで集まっています。かれらにお会いして、彼らの活躍と成長ぶりを目にすることができることは、教師の冥利に尽きるところであります。
今日、大学教育はIT(情報技術)を使ったリモート授業で十分やっていけるという声をときどき耳にするにつけて、高等教育の現状に疑問を感じることもあります。法学部は主に実学を扱う学部ですが、それでも、高等教育であるということは単に知識を教えるだけではないと思います。教員の"背中"を見て、学生がものの考え方、対処の仕方など、そこから知識以外の、いや知識以上のものを汲み取ることも、大学教育の重要なポイントでしょう。さらに、学生同士が集団で意見を交換しあったり、議論しあうことを通して、自分の考えを形成していくことも重要です。リモートで置き換えられると言われるのは、大学教育が知識の習得に気を取られすぎているからではないかと心配しています。それが老人の杞憂にすぎないことを願っています。
設立後20年しかたっていない消費情報環境法学科ですが、100年後の世界を見据えて、斬新な教育プログラムで優秀な学生を育てるとともに、教員一人一人が研究者として学問の発展に貢献されることを期待しております。末筆ながら、消費情報環境法学科のますますの発展をお祈りいたします。
黒田正明