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白金法学会

白金法学会論文賞

2007年度 白金法学会論文賞審査結果

1.総評

 今回は、2件の応募があり、しかも、その両者とも大学院博士後期課程の院生であった。
 課題テーマが「最近発生した事件に対する自己の見解について」であったことから、両応募者ともごく最近に大きな社会問題となった事件を取り上げて法的にアプローチしている。白金法学会論文賞審査委員会は、10月に審査会議を開催し(評価書類提出によるものを含む)厳正な審査の結果、応募者2名に対し、それぞれ優秀賞を贈ることと決定した。以下は、その講評である。
 上杉めぐみ氏の論文(「ミートホープ牛肉偽装事件」)は、消費者保護という明確な視点で考察する論理一貫した内容であり、ミートホープ事件を深く分析して、各種の法律の適用を詳細に検討した好論文であるといえる。文章力、構成力も秀でている論文であるといえよう。難点をいえば、引用文献が偏頗で、新しい文献が含まれていないという点である。また、独創性、新奇性が少なく、これを解決するには、たとえば、外国法との比較法的検討や、あるいは、独自の解決策を立法論としてであっても広く展開するなどの工夫が望ましい論文である。
 深川裕佳氏の論文(「教育サービスの中途解約に関する最三判平成19年4月3日(裁判所時報1433号3頁)を通じて」)は、学術的論文として、独自の分析の優れた箇所も多く見受けられた力作である。引用文献も多く、かつ、適切であり、前半部分の構成力は高く、読み応えがあった。欠点は、法律論文の約束事が若干、守られていない箇所があり、また、継続的役務契約につき前半部分の対象~会話学校から、後半部分の対象~大学へと展開している点は、独創性が認められるものの、そのような展開は真に可能なのかということに疑問を感じた。この点については、事象的な類似性だけから安易な展開をするのではなく、十二分に検討することが必要であったのではないかと思われる。
 審査委員の結論は順位につき、ほぼ二分していた。そして、上記のように、両論文とも一長一短があり、ともに優劣をつけがたいということ、また、審査委員が想定する基準を超えていると考えられることにより、ともに優秀賞として選出するに至った。

2.審査結果

優秀賞:上杉めぐみ、深川裕佳