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「?」を発する姿勢を大事にしよう ―「法」の部首は何故サンズイなのでしょう?―

西田 真之

1984 年2月19 日生まれ
担当科目  法学の基礎,基礎演習1,基礎演習2,2年次演習2,日本法制史1,
日本法制史2,近代日本法思想史,演習
専攻分野 法制史(日本・アジア)

 新入生の皆さん,ご入学おめでとうございます。皆さんはこれから新たな扉を叩いて,大学で学ばれることになります。まずは,大学生活が一人一人にとって楽しくさらに充実したものになりますように,心からお祈り申し上げます。
 さて,皆さんは「灋」という字をご存知でしょうか。この字は,古代中国で用いられていた「法」という漢字です。巷では,争い事が起きた際に裁判所へ訴え出ても自身の主張が受け入れられず,泣き泣き去らなければならないので「法」という漢字が生まれたという説もありますが,これはあくまでもイメージに過ぎず,少なくとも「法」という文字の成り立ちから見ますと正しくありません。古代中国文字の「灋」は,「水」(=サンズイ)・「廌」・「去」の3つの部分に分けることができ,それぞれ意味を有しております。
 では,「法」あるいは「灋」の部首は何故「水」(=サンズイ)なのでしょうか。サンズイが部首の漢字には「水」のイメージがあります(「海」・「河」・「渓」・「源」・「汲」等)。そうすると,「法」もそもそも「水」と関係しているのか,という疑問が湧いてくるのではないか,と思います。一体どのような関係性があるのでしょうか。諸説ある中の一つをご紹介しますと,古代では河川が領土の境界を示す指標となっており,罪を犯した人を境界の外へ追放していたことから,「法」という文字の部首は「水」が用いられている,という考えがあります(これ以外にも興味深い見解が色々と示されております)。このように,一見すると「法」という字の成り立ちには,何ら関係も無いように見える「水」の存在が大きく関わっていることが分かります。
 法学の領域を多角的な視点から概観してみますと,非常に奥深い世界が広がっていることに気付かされます。皆さんは,これから法学を学ばれるにあたって,六法や判例と接しながら,法の世界に触れられてゆくことでしょう。その際には,「?」の疑問符を常日頃から投げかけるようにする姿勢を大事にしていって下さい。「なぜ,この制度があるのか?」,「なぜ,このような学説が展開されているのか?」と,視野を広くして答えを探すと,その謎が見えてきます。
 「法」はある社会における歴史と文化を背景として育まれてゆきます。そうした法の世界の営みを理解しながら,法学の世界の面白さを探求してゆきましょう。