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幅広い教養を身につけよう

鈴木 敏彦

 ご入学おめでとうございます。
 私は,他の先生方と違って,学者ではなく,法律実務家です。つまり,24 年間,検事として刑事事件の捜査・公判に携わった後,本学の専任教員になったのですが,現在でも,弁護士登録をしていて,主に刑事事件の弁護人として法廷に立っています(弁護士は,医者と違って専門化が進んでいないので,刑事法の教員ですが,民事事件もやっています。)。大学で法律を学んだ後もずっと法律を使って生活をしてきている訳です。
 みなさんの中にも法律を一生の仕事にしたいと思っている人もいると思いますが,ほとんどの人は,将来法律とは関係のない仕事に就くと思います。しかし,法的な物の考え方(リーガルマインド)は,どんな仕事をする場合でも役に立つので,在学中にしっかり身につけて欲しいと思います。
 しかし,白金校舎に来るまでの2年間は,法学だけではなく,哲学,歴史学,経済学,政治学,社会学,心理学等の周辺科学もしっかりと勉強して欲しいと思います。ずっと法律を使って生活をしてきている立場として,世の中は法律だけで動いているわけではないということがよく分かりますし,法学の中心である法解釈学は,条文の文言の操作だけではなく,その背景にあるものを理解している必要があるからです。たとえば,「人を殺した」場合には,殺人罪になりますが,「人」とは何なのかというのは難しい問題です。脳死状態でも人なのかという問いに答えるためには,単に「人」という言葉の意味を分析するだけではなく,生命科学や哲学の見識が必要なのです。私が担当する刑事訴訟法でも学説が鋭く対立したり,実際の裁判で検察官と弁護人の見解が対立する部分があります。いずれの見解も条文の文言の操作だけではどちらが正しいとは決めがたいのがほとんどですし,そもそも何故そのような対立があるのかについても,条文の文言を見ただけでは理解できないのがほとんどです。したがって,専門の勉強に入るまでに広い教養を身につけておいて欲しいのです。
 もちろん,大学は勉強だけをするところではないし,実社会で成功した人の中には学生時代の成績は芳しくなかった人も多いわけですが,せっかく4年間という時間と相当高額の授業料を使って法学部に在学するのですから,元を取って欲しいと思います(これはみなさんと同じ年頃の子供を持つ親としての意見です)。