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新入生へのメッセージ

久保 浩樹

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。これからの新生活に不安もありつつも胸を躍らせていることだろうと思います。新入生の皆さんそれぞれ大学や教員に期待することや目標とすることは様々だと思いますが、ここでは皆さんより少しばかり人生経験を長く積んだものとして、また大学生と大学院生を合計で10年間経験した身として、わずかばかりのアドバイスをしたいと思います。

 一つ目は、まずお伝えしたいことは、学生生活を通じて、大胆に大きな理想を持って、どんなことがあっても失敗を恐れず色々なことに挑戦してみてください、ということです。私自身、大学生時代から今の研究者としての道を歩む過程で、成功もあれば失敗もありました。失敗は人生の終わりでもなければ、恥ずかしいことでもなく、次につながるチャンスでもあるのです。皆さん自身が、やってみたいな、目標としたい、将来をかける夢にしよう、そういったものにめぐりあえれば、迷わず挑戦してみましょう。

以下は、評論家の山本七平が『静かなる細き声』という本に書かれた一節ですが、私が皆さんと同じ頃の年に読んで本当に感動しましたので、ここでご紹介したいと思います。「人はみなその若き日にさまざまな夢を持つであろう。その夢が実現することもあるであろうし、実現しないで終わってしまうこともあるであろう。私も確かにいろいろな夢を抱いた。」「しかし、たとえそれが不可能と思える現実の中にあろうと、いわば戦場にあろうと、病床にあろうと、失意の底にあろうと、その夢は持ちつづけてよいのであろうと思う。」「 育って成果となるか否かは、人が如何ともしがたいことである。 しかし、植えられたものに水をそそぎ続けることは人間に可能なのであり、そのことが無意味だと言うことではないと思う。」

 二つ目は、ぜひ分野にとらわれずに多くの本を読んで欲しいということです。私自身は、本や論文を書いたり、批評したり、読んだりすることを仕事にしています。しかし、研究者ではなく、一般社会で社会人として生活する上でも本の価値は極めて大きいと断言します。私が学生の頃、ある著名な歴史学者の先生の授業を取ったところ、「今の時期に千円を出して買って読んだ本の価値は、十年後に一万円、二十年後に十万円になって返ってきます。」という趣旨のことを言われ、当時は半信半疑でしたが、いまではその価値を痛感しています。皆さんも、自分への投資だと思って、分野にとらわれず本を読んでください。一つ言えることは、わかりやすいものを読むのではなく、あえて難しそうなわかりにくいものでも挑戦してみる価値があるということです。一読して読んでわからなかったことが、数年後、十数年後になってその意味が年を重ねるごとにわかるようになるということもあるということです。皆さん、どんどん本を読みましょう!

 三つ目は、「わからないことを知る」ようになってほしい、ということです。「無知の知」ではないですが、「わからないことについてわかる」だけではなくて、「わからないことがあり、どの辺までが理解できていてどの辺までが理解できないのか」ということを理解できるようになって欲しいということです。基本的には高校までの授業は「すでにわかっていることについてわかるようになる」ことが目的でした。しかしながら、大学以上の学問では、人類がわかっていないこと、答えが出ていないこと、はっきりとわからないことが無数にあります。やや大げさに言えば、学問や知性の限界というものを触れて理解できるようになって欲しい、ということでもあります。私が学問や授業という手段を通じてお手伝いできるのは、学問分野に関して現状わかっていること、いないことを授業を通じて伝えするという限られたことですが、その中でも、大学という皆さんにとって最後の教育の機会を通じて、皆さんの頭と知性を限界まで使って学問の楽しさや面白さを味わえる環境を提供したいと考えています。

 あれこれ小難しいことを書きましたが、一生に一度しかない大学生活を悔いのないように過ごしてください。私も数多くの経験を大学時代に数多くの経験をし、悔いはありません。皆さんが卒業できるように、ここにいてよかった、と思える生活を送ることができるよう、わずかながらのお手伝いをするとともに、充実した生活が送れることを期待しています。