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自己紹介

葛谷 彩

1970 年生まれ
担当科目 国際政治学,政治学基礎ゼミ,国際関係史,政治史,演習
専攻分野 国際政治学,ドイツ国際政治思想

 入学おめでとうございます。自己紹介を兼ねて自分の大学生活を振り返りつつ,皆さんへのアドヴァイスらしきものを捻り出せればと思います。「こんないいかげんなやり方でも何とかなるのか」と安心するも良し,「こんな学生生活にならないように気をつけよう」と反面教師にしてもらっても構いません。
 私が大学に入学したのは日本がまだバブルに踊っていた1989 年でした。法学部を選んだ理由は至極平凡で,つぶしが効くというものでした。当時の時代風潮の影響もあったのか,自分の将来をはっきりと定めるのが嫌だったのです。いわゆる典型的なモラトリアム人間でした。3年生の半ばまでサークル活動に明け暮れ,空いている時間は映画館に通うという生活を送り(特に黒澤明や小津を始めとする古い日本映画が好きでした),クラスの友人に呆れられるほど講義にはほとんど出ていませんでした。そのような生活を送っていた私が大学院に進もうと考えるようになったのは,なぜなのか。一つは,サークル活動で政治・社会問題についてのディスカッションをするにあたってさまざまな本や論文を読む中で,一つの問題について調べ,それを基に自分の意見を構築することの面白さを味わったからです。また他大学の学生とのディスカッションは相手の意見だけでなく,自分の意見についても批判的に見るための良い練習になりました。もう一つは,二人の先生との出会いでした。まず故高坂正堯先生とは,先生のゼミ(国際政治学)に入ったことがきっかけでした。今だから言えますが,先生の著作に惚れ込んでというより国際政治に対する漠然とした興味からでした。先生はヨーロッパ外交や日本政治外交・安全保障論のみならず,思想に関しても幅広い知識をもっておられましたが,決して専門用語を多用されることはなく,かといって明確な答えを出すこともなく,聞く者にボールを投げるかのようなコメントをされていました。当時はその意味がわからず,当惑することが多々ありました。先生が亡くなられた後に,その著作を読むことでようやく理解できたものもあります。もしかしたら,何年後かにはまた別の解釈をするかもしれません。自分がおかれた政治・社会状況の変化のみならず,自分自身の変化によっても,同じテキストの解釈が変わっていくというのも,読書の醍醐味です。かくして長い年月にわたって多くの人々に影響や刺激を与えていくことができる本が,古典として残っていくわけです。
 もう一人は野田宣雄先生(ドイツ政治史)です。講義にほとんど出ていなかった私が先生を知ったのは,先生の著書との出会い(野田宣雄『教養市民層からナチズムへ:比較宗教社会史のこころみ』)がきっかけでした。これはたまたま試験勉強のために買った本でしたが(先生には大変失礼な話ですが),非常に面白く(ドイツでなぜナチスが台頭し,人々の支持を得たのかという問題に対して,比較宗教社会学の観点から考察したものです。お勧めです),試験ということも忘れて読み耽りました。もともとナチス・ドイツに関心があったこともありましたが,将来のことはともかくとして,大学院に進学してもっと勉強してみたいという気になりました。野田先生には大学院を通じてご指導を賜り,ドイツの歴史,あるいは当時日本で流布されていたステレオタイプなドイツ像とは異なるアクチュアルなドイツの政治・社会の話は,私にドイツの国際政治思想への関心を深めるきっかけを与えてくれました。その後ドイツに留学するに至り,先生のお話を実際に自分の目で確認することになりました。帰国後母校で助手をしながら博士論文を書き,オーバー・ドクターという名の浪人生活を一年した後,2005 年4月に明治学院大学に着任しました。
 さて,以上の自己紹介からどのようなアドヴァイスを捻り出したいのかと言いますと,大学とは出会いの場であるということです。勉強に関しては3年生の半ばまでとても熱心な学生とは言えなかった私が今こうして大学の教壇に立っているのも,大学でのさまざまな出会い(友人,恩師,本,留学など)の結果です。事実大学はサークル活動などを通じたさまざまなバックグランドや個性をもつ友人や,さまざまな専門領域を持ついい意味でも悪い意味でも?個性豊かな教員たちとの出会いのみならず,本学の提携校制度を利用した留学を通じてのさまざまな国の人たちとの出会いが可能な場です。しかし最もスケールの大きい出会いと言えば,読書でしょう。なぜなら,読書とは時代と国を越えた著者との出会いに他ならないからです。ですから決して安くはない授業料の元を取る意味でも,図書館をフルに利用して下さい。特に難しめの本に一度挑戦してみて下さい。最初はちんぷんかんぷんでも最後まで読み通せば,勉強していく中で徐々にわかるようになります。いずれにせよ,そうしたどっしりとした内容のある専門書を読めるのは,大学の4年間ぐらいしかないのです(これは社会人になると,いやでも思い知らされます)。大学に入って何から始めたらよいのかわからないというのなら,とりあえずは図書館に足を運んでみてはいかがでしょうか。本の紹介を始めとして,こちらでできることは何でもお手伝いします。それでは,大学でお会いしましょう。

主要著書:
  『 20 世紀ドイツの国際政治思想―文明論・リアリズム・グローバリゼーション』南窓社、2005年。
  編著『歴史のなかの国際秩序観:「アメリカの社会科学」を超えて』晃洋書房、2016年。