歴代の学科主任報告

消費情報環境法学科の近況報告

来住野 究

1.はじめに
今年度の消費情報環境法学科は、211名の新入生を迎えて新学期をスタートしました。
それでは、簡単に本学科の近況をご報告いたします。

2.教員の異動等
今年度は教員に異動はありません。
大野武教授は、特別研究(サバティカル)を取得されています。

3.就職状況
全国的にも就職状況は好転してきていますが、2013年度本学科卒業生の就職率は95%と高水準を維持しています。過去3年間の就職先業種比率を見ますと、金融・保険24.3%、IT関連11.7%、建設関連・ライフライン9.9%が上位を占めています。

本学科では、昨年度から「読売キャリア形成講座」の姉妹講座として「法律学特講3(業界研究講座)」を開講しましたが、受講生にも好評であり、本年度も引き続き開講します。これらのキャリア講座が就職活動の有利な展開に結びついてくれれば幸いです。

4.インターンシップ
本学科独自のインターンシップとして、毎年十数名の学生が自治体の消費生活部門や消費者団体で、消費生活啓発業務・相談業務の補助などの就業体験をしています。今年度も、合計15名の学生が夏休みを利用して就業体験をします。その内訳は、横浜市消費生活課2名、川崎市消費者行政センター2名、鎌倉市消費生活センター2名、港区消費者センター2名、野洲市市民生活相談課(滋賀県)1名、日本消費生活アドバイザー・コンサルタント協会2名、社会的包摂サポートセンター2名、関西消費者協会1名、全国婦人会館1名となっています。今年度は一次募集だけでは定員に満たなかったので、人気の低迷が懸念されますが、より多くの学生が希望することを期待します。

5.雑感
今年度は消費情報環境法学科独自の報告事項が少ないので、私の雑感を少々。

(1) 最近法学部は高校生に人気がなく、志願者は減少傾向にあります。「法律の勉強は難しい」というイメージがあるようですが、他の学問も同様に難しいはずですから、これを肯定したら、他学部の先生に怒られそうです。「法律の勉強は難しい」というイメージが「司法試験は難しい(法曹になるのは難しい)」というイメージと結びついているのかもしれませんが、法学部に入学する学生のうち法曹を志す学生はかなり少ないはずですから、「司法試験は難しい」というイメージが法学部への進学を敬遠させているわけではないでしょう。法学部が敬遠されるのは、彼らが閉塞感のある社会の中で成長してきたためか、社会問題を仕方のないものと受容するにすぎず、社会のあり方に対する問題意識が低く、法律を通じて社会問題を解決しようという気概が乏しいからではないかと個人的に考えています。あるいは、文章を読むことに慣れていないのだとすると、細かな活字がぎっしりと並んでいる六法には相当な抵抗があるのかもしれません。そうだとすると、法学部志望者を増やすのはかなり大変そうです。しかし、法律を堅苦しいものとして敬遠して専門的に学ぶ学生が少なくなり、法律が国会議員・官僚・法曹などのエリートに独占されるようなことになれば、国民は法律を受動的に受け入れるにすぎず、悪法でさえも盲従することになりかねず、とても恐ろしいことになります。さしあたりは、法学部の卒業生には、法曹・公務員・士業・民間企業・教員など多彩な進路があるということを啓発していくほかはないでしょうか。

(2) 本学科は、情報処理教育をセールスポイントの1つとしています。パソコンを活用した情報関連の授業としては、パソコンの基本操作・文書作成などの入門的なものから高度なプログラミングに至るまで、各自のスキルに応じてレベルの異なる「情報処理1~4」が開講されているほか、法学と情報処理の融合的な科目として、インターネットを通じて法律に関する文献・情報・判例を収集し、所定のテーマ・判例について学生が自ら調査してそれを発表することを主な内容とする「法情報処理演習1・2」が開講されています。学生はかなりパソコンを使いこなし、法律問題に関するプレゼンでは教員以上にパワーポイントのスキルを身につけている学生もいます。しかし、内容が伴っていないことが少なくありません。これは、インターネット上の情報に過度に依存し、本や雑誌をあまり調べていないからではないかと思います。インターネットは情報源の1つにすぎず、本や雑誌を調べなければわからないことが多いことは繰り返し指導しているつもりですが、十分に伝わっていません。また、見解の対立がある問題について、主にどのような見解があり、それぞれの見解はどのような根拠を主張し、どのように批判されているかということを整理できない学生が多いといわざるをえません。もちろん学説の根拠と問題点の整理だけで正しい見解にたどりつけるわけではありませんが、これが議論の出発点になります。これも多くの文献を熟読していないからではないかと推測されます。また、非常に悲しいことに、法律科目の授業に六法を持参しない学生が多いのが現状です(スマホで法律を検索している学生もいるようですが、六法のほうが参照条文や事項索引等により検索しやすくなっていますので、六法を使いこなせない者がスマホで該当条文を効率的に検索できるとは思えません)。したがって、これからは「パソコンに依存しない教育」こそが重要な課題になるように思います。