白金法学会
白金法学会論文賞
2017年度 白金法学会論文賞審査結果
1.総評
今年度の論文賞は、下記の6つのテーマ(⑥のみ1,2年生限定)から一つを取り上げ、具体的問題点を踏まえつつ、原因、解決策等について論じてもらうものでした。
① ネット投稿の法律問題
② 民法(債権法)改正の諸問題
③ 裁判員制度の課題
④ ポピュリズムについて
⑤ 天皇退位について
⑥ 自分が最も関心ある法的または政治的な問題について(自由論題―1,2年生限定)
応募総数は17件あり、その内訳はテーマ①が1件、テーマ②が3件、テーマ③が6件、テーマ④が5件、テーマ⑤が2件でした。
【審査経緯】
論文審査は、白金法学会の役員によって行われました。教員役員3名、OB役員10名が、それぞれ審査にあたりました。10月25日に開催した審査会において、厳正な審査を行った結果、最優秀論文賞について該当者はありませんでしたが、優秀論文賞を2名の者に、奨励賞を7名の者に授与することと致しました。
【講評】
優秀論文賞について 本年度の白金法学会論文賞では、上記のとおり、鈴木さんと高橋さんの論文が優秀論文賞に相応しいと評価されました。
鈴木さんの論文については、原始的不能に関する法律上の論点を踏まえ、それに関する主要な学説を丁寧かつ正確に調べ、考察を加えている点が高く評価されました。ただし、最優秀論文賞に至らなかった点としては。結論について特定の学説に専ら依拠しており、独自性という点で物足りなく感じられたことがあげられます。とはいえ、学部生の論文としては十分に高い水準に達していると評価することができますので、優秀論文賞といたしました。
髙橋さんの論文については、次の2点が高く評価されました。1つは、論文構成について、きちんと章立てがなされており、グラフを用いるなど、文章が読みやすく工夫されている点です。もう1つは、裁判員制度についてよく調べており、課題に対する自分の考え、解決策が述べられている点です。ただし、最優秀論文賞に至らなかった点としては、文献引用の仕方に不十分な点が見られる点、やや議論が平板で説得力に欠けた点があげられます。裁判員制度の課題については、今回どの論文も同じような課題が述べられていましたが、その中で課題についての解決方法まで考えている点を評価し、優秀論文賞といたしました。
奨励賞について 奨励賞とされた後藤ゆきさんについては、論文構成、着眼点が評価されました。結論である終章が短かく、もう少し議論があればよかったです。
江﨑さんについては、自分の意見・考察が述べられている点が評価されました。しかし、論文構成、文献引用に工夫が必要です。
遠藤さんについては、着眼点が評価されましたが、論文構成、文献引用に工夫が必要です。
奨励賞の論文は、「ポピュリズムについて」、あるいは「天皇退位について」の課題に関しては、一定の問題整理をしています。前者の課題に関しては、参考文献をよく読み、整理をしています。また、後者の課題に関しては、多面的な問題整理(賛成論と反対論)をしています。しかし、いずれも、独自の議論を展開する部分は、あまりないようです。議論を整理して終わってしまう論文が多かったです。
扇元さんについては、論文構成は良く、第1章は、整理できて、また第2章は、第1章の議論を踏まえて議論を展開し、一般論を踏まえて日本を分析しています。わりに理路整然していますが、どこまで本人の議論なので、不明な部分があります。なぜか文中のフォントが一部異なっていました。
広瀬さんについては、文章の構成・議論のすじは、特に問題ありませんが、章節を設けて議論を分かりやすく展開すべきです。また、どこまでが作者の独自の視点あるいは議論か、不明な部分があります。
三浦さんについては、分かりやすく文章を書くことにしていました。但し独自の視点がありませんでした。また、天皇退位の問題に関しては、特別法への言及が、全くないことが不十分です。皇室典範の改正をめぐる議論をして終了していました(特別法の制定に言及していない)。
安川さんの論文は、問題を提起し議論をよく整理し、展開していますが、論文構成としては、結論の部分では本文中で議論をすべき内容を長く議論・分析しています。この点、工夫が必要です。
以上7件の論文については、課題として残る点はあるものの、説得力のある内容でありましたので、審議の結果、奨励賞に相応しいとの結論に至りました。
2.審査結果
(1)最優秀論文賞:該当なし
(2)優秀論文賞:2件
鈴木涼平(法律学科3年)
髙橋歩夢(法律学科3年)
(3)奨励賞:7件
後藤ゆき(法律学科4年)
江﨑愛美(法律学科3年)
遠藤かすみ(法律学科3年)
扇元遥(法律学科3年)
広瀬祥和(法律学科3年)
三浦宗一郎(法律学科3年)
安川友貴(法律学科3年)
(4)参加賞:応募者全員