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白金法学会

最優秀卒業論文賞

2009年度 白金法学会最優秀卒業論文賞

受賞者には、2010年3月19日の卒業式会場において、白金法学会から表彰状と賞金が授与されました。

◇政治学科 及川 純(おいかわ じゅん)
国家の適正規模』 

 国家という巨大なシステムは、人間個人がなしえないような大きな仕事を可能にした。それによってわれわれが受けた恩恵は計り知れないし、もはや手放すことはできない。だが、ひとたび使い方を誤ればかつて無いほどの破壊力をもって流血の惨劇を引き起こす。人類にとって国家は無くてはならないシステムである以上、この強大できまぐれな構築物をいかにコントロールすべきであるかという議論は欠くことができない。  
 国家がわれわれに害をなすとき、そこには様々な要因が考えられるが、本稿では「規模」という概念に着目して巨大なシステムの内奥を探ることとした。「規模」と一口に言っても、国家には様々な「規模」がある。人口、領土、種々の経済指標、文化的多様性、言語圏、宗教など、計量可能なものから数値化できないものまで、様々な「規模」が入り乱れている。それだけに複雑ではあるが、人間社会に生じうるさまざまな社会問題についての普遍的な議論が可能なのである。  
 本稿では、国家とわれわれを取り巻く諸々の社会問題を扱う上で、いくつかの対立項を用いて議論を構築した。主要なものをざっと敷衍すると、国家と個人、国家と世界、ユートピアとディストピア、「遠心力」と「求心力」、などである。最後に挙げた「遠心力」と「求心力」は、人間集団に発生する、分裂へ向かうはたらきと集合しようとするはたらきのことを示しており、このふたつのはたらきを用いながら規模の不適正さがもたらす悪弊の分析を行った。  
 結局の所、国家には適正規模なるものがあるのか?と問われれば、ないと答えるほかない。本稿の目的は国家の適正規模を一意に定めようとするのではなく、政治権力や国境によって切り刻まれた世界を一度解体し、「規模」という切り口から人間社会を見つめ直すことにある。また、「規模」の視座を用いて人類文明の持続可能性についても併せて考察した。

講評

 大変豊富な文献渉猟をおこなったうえで、身近から宇宙までという幅広い視野に立ちながらも、一貫した論理展開を披露している点が、きわめて高く評価された。また、文章の読み易さの点においても大変優れていた。

優秀賞

津守 拓也(法律学科)「釈明義務の限界~民訴改正・司法制度改革と判例の変遷に照らしつつ~」
菅野 亮(政治学科)「日本型生活保障レジームの崩壊と拡大する貧困―自己責任で覆われた社会からの脱却を目指して―」
田中 義展(政治学科)「市議会における政策立案環境と議員提出条例のメカニズムについて」
水野 陽平(消費情報環境法学科)「インターネット時代と著作権をめぐる法的考察~グーグル・ブック検索訴訟を踏まえて~」