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白金法学会

最優秀卒業論文賞

2012年度 白金法学会最優秀卒業論文賞

受賞者には、2013年3月19日の卒業式会場において、白金法学会から表彰状と賞金が授与されました。

◇法律学科 渡辺 早紀
『外国人の教育を受ける権利と不就学問題』 〈本文を見る〉

 日本国憲法下において、外国人子女の教育を受ける権利はどのように保障され、また、問題点はないのかを検討した。その中で、「不就学」の問題に注目をし、問題解決のためどのような取り組みが考え得るかを考えた。
 まず、日本国憲法下における外国人の権利保障は、明文にて保障規定はないが、判例・通説共に肯定説・性質説の立場を示し、「権利の性質上日本国民のみをその対象としているものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」と解されている。それを前提に、日本国憲法26条における教育を受ける権利が、外国人にも適用され得る性質のものと言えるかどうかを考える必要がある。教育を受ける権利は、自由権と社会権の性質を併せ持つものと解されており、その性質や、日本が批准している国際法などの規定からも、外国人であっても保障されるものと解されている。一方、日本国憲法26条は2項において、保護する子女に普通教育を受けさせる義務を規定しているが、これは外国人には適用されないものとされている。  
 以上により、教育を受ける権利は、外国人にも保障され得る権利であり、実務でも同様の理解が示されているが、実際にはさまざまな問題があり、その一つとして、「不就学」問題がある。これは、学びの機会を欠いている状態であり、保障が実現していないものであり、深刻な問題として捉える必要がある。外国人子女の家庭環境や学習上の問題、制度的問題がその原因となっている。これらの問題の解決のために、自治体がボランティアと連携して保護者や子女へのサポートを充実させていくことや、制度として、外国人への義務教育の適用、インターナショナルスクールや民族学校の「1条校」化、公的補助の拠出などを行い、外国人の「就学の場」の増強や、就学環境の充実が必要であると考える。
 外国人子女の教育について考える場合、忘れてはならないことは、教育の機会としては日本人と同じように扱われるべきであるが、実際の教育を受ける際には、一定の配慮が行われるべきであるという点である。学校が外国人にとっての抑圧の場とならないよう、教育の場において多文化・異文化理解教育、国際理解教育、人権教育などを推進することや、外国人子女の学習環境の充実がはかられるべきである。

講評

 しっかりした問題意識に基づき重要なテーマを取り上げた着実な論文である。教育をめぐる憲法上の論点について判例・学説を丹念に調べた上で、外国人の不就学の実態・原因・対策について検討しており、よくまとまっているが、判例・学説の検討が自説の補強・深い考察に十分に生かされていないのが残念である。 

◇政治学科 牧野 傑
『「主権者教育」に関する具体的な提言―地方選挙における投票参加に関する研究と政治教育カリキュラムの研究を通して―』〈本文を見る〉

 本論文は、若年層の相対的な低投票率が、政治の場における若年層の過少代表を引き起こし、民主主義の長期的な安定を揺るがす危険性があると考え、地方選挙における投票参加に関する研究(第Ⅰ部)と、政治教育カリキュラムに関する研究(第Ⅱ部)を行ったうえで、主権者教育に関する具体的な提言(第Ⅲ部)を行った。  
 第Ⅰ部では、まず地方選挙における若年層の投票率が相対的に低い状況を明らかにし、先行研究として、地方選挙を対象に、投票‐棄権のメカニズムの分析、若年層の投票参加規定要因の分析、「選挙情報」と投票参加の関連の分析が不十分であることを問題として取り上げた(第1章)。次に、横浜市が市内有権者に実施した意識調査データを用いて、地方選挙における若年層の投票参加規定要因を分析し、若年層は市政関心や政治的有効性感覚が高い人ほど、選挙公報への接触を媒介し、投票参加を行うことを明らかにした(第2章)。  
 第Ⅱ部では、戦後日本において政治教育が不十分であったことを明らかにし、政治教育の具体的カリキュラムが生徒に与える効果研究の蓄積が少ないことを問題として取りあげた(第3章)。次に、模擬投票が生徒に与える効果を分析し、異なるレベルの政治や選挙に対する関心を高める効果が相対的に弱い傾向にあること、事前学習において選挙情報媒体を積極的に活用した生徒ほど、政治や選挙に対する関心を高めること、政治知識量の多い生徒ほど、政治関心や投票意欲が高い傾向にあることを明らかにした(第4章)。  
 第Ⅲ部では、第Ⅰ部と第Ⅱ部で課題として提示した若年層の日常での情報接触の傾向、選挙公報の認知度、模擬投票の長期的な効果を検証した。結果として、若年層が日常においてインターネット経由でニュースに接触していること、選挙公報の認知度が低いこと、模擬投票の経験がある人ほど、政治関心や投票意欲が高い傾向にあることを明らかにした(第5章)。次に、第5章までの研究を踏まえたうえで、学校教育における政治教育カリキュラムについて、社会科や総合的な学習の時間を活用して取り組める授業を提案し、選挙期における若年層の選挙啓発事業として、インターネット媒体を活用した取り組みを提言した(第6章)。 

講評

 審査員8名中7名が第1位に挙げ、他を圧倒する出来であった。  
 「若年層の投票参加」に関する個人の問題意識を、統計・計量分析を豊富かつ適切に用いた上で検証している点で、大変優れていた。 

優秀賞

池田 麻衣(法律学科)「消費者の現状と消費者事故から考える情報公開の必要性」
石川 恵美子(消費情報環境法学科)「見せない義務と見る・書く自由-東京都青少年保護条例に見る、健全育成と有害表現の共存-」

奨励賞

影山 諒太郎(法律学科)「刑法学習ソフトウェアの開発」
鈴木 岳(政治学科)「プロスポーツ組織が地域にもたらす効果に関する検証」
長 連龍(政治学科)「大衆を探して―オルテガの大衆論の比較検討―」