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白金法学会

最優秀卒業論文賞

2014年度 白金法学会最優秀卒業論文賞

受賞者には、2015年3月16日の卒業式会場において、白金法学会から表彰状と賞金が授与されました。

◇法律学科 村上 未萌(むらかみ みも)
『離婚後の子の利益―ハーグ条約から見た今後の家族のあり方―』 〈本文を見る〉

 近年、国際結婚が増えるにつれて、国際離婚も増加しており、様々な問題が起こっている。 それに関連して、2014年4月1日、国際結婚が破たんした際の子どもの取扱いを定めたハーグ条約が日本で発効された。ハーグ条約とは、一方親が他方親の許可を得ず、自分の出身国や第三国へ子を連れ去った場合に、子を元の国へ戻すため、各国間の協力体制を敷くものである。条約批准と共に採択されたハーグ条約関連法には、「子の利益」の観点から、独自に定められた返還拒否事由がある。本論文では、その前例として、世界に先駆けてスイス法が定めた返還拒否事由と判例を挙げ、日本でのハーグ条約の運用の実態と弁護士の対応について述べた。 これら例外的な返還拒否事由で救済されない子は、中央当局を通じて紹介された、面会交流やADR等を推進する第三者機関の援助を受けることになる。離婚後の親子関係の構築については、本論文で取り上げた日本とフランスの法制度のように、国によって親権制度にギャップがある。今後の面会交流については、離婚前に子の養育計画について定め、双方の親が子と面会交流をしていくことや、養育費の支払と面会交流は、本来別々の事柄として取り扱われるべきであること等を周知していくことが望ましい。そのためには、離婚前に当事者に対し、離婚後の監護の実情を学ぶ機会を設ける等、感情的対立や不安感を乗り越え、子の利益に配慮するような体制作りが必要である。 さらに児童虐待等をうけている子に対し、緊急避難場所を提供し援助している子どもシェルター等もある。しかし、様々な状況に置かれている子がいる中で、本当に援助が必要な子へ届いていない現状がある。今後は被虐待児に気付いた周りの人たちが、虐待通告をするだけではなく、その子を相談等ができる第三者機関へ誘導していく仕組みを作っていくことが重要である。 既存の家族法の予期する家族だけでなく、全ての事象をそのまま、法的システムへ当てはめるのではなく、条約や各国の法律、家族等のシステムを修正し協働していくことで、初めて離婚後の親子関係の構築がなされていくと考える。今後は、社会的弱者の保護を念頭に、多様な家族観を受け容れるシステム構築がなされ、日本と海外の間の様々な認識の隔たりを埋めていくことが鍵となるであろう。

講評

 発効間もないハーグ条約を取り上げ、破たん後の子供の利益を家族の在り方という観点から、法的に深く考察、論文としての構成に優れ、形式も整い、参考文献や参考データの正確性など学生の論文としては非常に高いレベルにあった。
  また、論文の長大さについて、ただ長いだけでなく、国内のみならず海外の文献も多数引用し、自分なりの考察も十分加えていた。その完成度の高さという点において、非常に優秀な論文であり大作であったという評価になった。 

◇消費情報環境法学科 安田 実穂子(やすだ みほこ)
『「代理出産により産まれた子との親子関係に関する外国判決の承認 ―最高裁平成19年3月23日決定を題材として―」』

 本論文は、最高裁平成19年3月23日決定(以下、本事案と称す)を題材として、海外で行われた代理出産によって生まれた子と代理出産を依頼した日本人夫婦の妻(以下、依頼者妻)との間に、実親子関係を認める外国判決をわが国で承認することが民事訴訟法118条3号の公序に反するかについて検討を行ったものである。 代理出産は日本で自主規制というかたちで事実上禁止されているが、本事案では代理出産自体の是非ではなく、代理出産における実親子関係に関する外国判決の承認が日本国内で公序違反に当たらないかが検討された。結論として、民事訴訟法118条3号における公序に反するとして、卵子提供者であって子と遺伝的繋がりのある依頼者妻を実母とする外国判決の承認を認めず、実親子関係を否定した。  本事案の公序審査において、最高裁は、明文の規定はないものの日本民法の解釈上、実母とは分娩を行った者である(以下、分娩者=母ルールと称す)とされていることを理由とした。しかし、公序の概念は時代によって変わるものであり、分娩者=母ルールのみに基づいて判断することは適切とは言い難い。このルールは、代理出産技術が存在しない昭和37年頃に生まれたもので、医療技術が発達し分娩せずに自分の遺伝子を継ぐ子を生むことが可能な現代になじむか疑問が残る。代理出産は現代における新たな課題として、法や医療など様々な分野でその是非について議論が行われている最中である。 そのため、法の枠内のみで公序審査を行うのではなく、その他の分野における議論も検討要素として、総合的に公序審査を行うことが適切だと考える。本論文では、分娩者=母ルールの解釈、代理出産により生まれた子の身体的影響、特別養子縁組、出自を知る権利、世論調査の5分野における議論と、本事案ケースへの影響を考えた結果、公序違反には当たらないと結論付けた。  今回のような、依頼者の卵子を用いる代理出産の場合は公序違反に当たらないとしたが、代理出産には第三者の卵子を用いて行うなど様々なパターンがあり、そのすべてに今回の議論が妥当するかは更なる検討を要する。代理出産は、何らかの理由で子を儲けることが難しい人にとっては福音のような技術であるが、今も発展途中の分野であるため、今後どのように利用していくのかは考え続けていく必要がある。 

講評

 グローバル化の流れの中、今後ますます増加することが予想される国際結婚。一方で国際結婚が破たんした例は、身近でも良く耳にする時代となった。その時、もっとも守られなければならない子供の利益を、家族の在り方という視点から、論文のテーマに選んだ点は高く評価に値する。 
 論文としての形式も整っており、着眼点も明確で、結論に至るまでの論旨も明瞭である。平成19年3月23日の最高裁判決に対する複数の反論材料をきめ細かく提示した上で、丁寧に私見をまとめているところも高く評価できる。 

優秀賞

大塚 夏希(法律学科)「女性雇用に関する労働法の問題点 ―新社会人となる学生の視点から―」
橋本 麻理香(法律学科)「表現の自由と名誉の保護 ―インターネットの個人利用者による表現行為と名誉毀損―」
三井 瑞貴(法律学科)「地方環境税から見る環境税(地球温暖化対策税)―正しい運用の仕方とは―」
岡 浩平(政治学科)「若者の政治関心と政治教育 ―政治教育の効果と実践的な政治教育の促進要因―」
野口 香織(政治学科)「ASEANにおける移民労働者の権利と政策」
宮内 葉月(政治学科)「人道的介入 ―平和国家日本としての課題―」

奨励賞

恵田 翔平(消費情報環境法学科)「教育格差から見た新聞奨学生制度の意義と労働法上の問題」