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新入生へのメッセージ

充実した4年間を過ごすためのエッセンス集

法学部の専任教員スタッフからのメッセージを掲載しております。教員自身が大学で学んだときの経験や、教えてきた経験などが盛り込まれています。このメッセージが、新入生の皆さんのこれから始まる学生生活の参考となるならば何よりも幸いです。

法学部長近藤 隆司
以下に掲載されるエッセンス集は、法学部の先生方が、教育研究のための貴重な時間を割いて、時には自分の学生時代を振り返りながら皆さんにアドバイスをし、時には自分の人生観を披露し、時には皆さんに、この4年間の学生生活において、期待し望むところを記して下さった実に貴重なエッセンス集です。一読していただければ、充実した4年間の大学生活を送るにあたっての有益な情報がびっしり詰まっていることを実感していただけるものと思います。

大学という場は、単に知識を獲得するためだけのものではありません。本学法学部は、社会における多様なニーズに対応すべく、法律学科、政治学科、消費情報環境法学科、グローバル法学科の4学科から成り、法学や政治学を基礎として、法律、政治の仕組みや制度および消費者問題・環境問題・法情報処理ならびに英語コミュニケーション力を駆使しての異文化理解などの学びを通して、社会(状況)を観察し評価し(ときに社会に生起する問題に対して解決策を提言し)、あるべき社会の姿を追求し、それを現実化する力を身につける場であるということができます。知識があっても使い方を知らなければ、また適切に用いることができなければ、どんなに豊富な知識を有していてもほとんど無意味でしょう。もちろん、知識のないところに思考はあり得ません。先人達が築き上げてきた理論や、それらの理論と歴史的社会状況との関係について学び、充分に理解し反芻したうえで、知識として修得することが必須の作業であることはいうまでもありません。ただし、皆さんがこれから学修しようとする法や政治も、社会とともに常に変化し続ける生き物であることを常に念頭に置いておく必要があります。これらは、机上の理論・遊びの道具ではありません。社会(状況)を的確に分析し、あるべき社会のために法や政治が如何にあるべきかを検討し、かつ将来の方向性を自ら示せる力を養わねばなりません。

そのためには、法学や政治学について学ぶことが重要であることはいうまでもありませんが、それと同様に、あるいはそれ以上に、人間として成長することが重要であることを認識する必要があります。法を適用するのも、政治を動かすのも人間であり、これを振り子に譬えれば、法学や政治学は錘であり、人間が支点であるといえますが、支点がしっかりしていなければ、たとえ錘がどんなに立派でも錘は充分に弧を描くことができません。言い換えれば、社会における法学や政治学の具現の姿は、それらを適用しようとする人間の人格のまさしく鏡像であるといっても過言ではないのです。幅広い教養と、多角的に物事を観察し、分析できる広い視野を持ち、柔軟かつ創造的発想に満ちた人間味あふれる人間になることこそが最も重要なことなのです。人間性を磨かずに、法学・政治学についての知識のみに磨きをかければ、俗にいう「悪しき法律家、悪しき政治家」に堕落することになるでしょう。

皆さんがこのエッセンス集をお読みになり、少しでも、心の琴線に触れた部分を、これからの4年間の拠り所にしていただければ幸いです。
最後に、近代日本の法体系の確立に尽力した、日本民法典の父ともいえる、ボワソナアド博士の言葉を紹介いたします。「法とは何か。それを一言でいえば『人を害するな』ということだ」。この意味は、一人一人の人間にかけがえのない人格的価値を認め、一人一人の人間が、いかなる権利をもち義務を負担するかを明らかにするのが、「法の使命」であるということです(大久保安甫『日本近代法の父 ボワソナアド』〔岩波書店、1977年〕186頁)。これは、キリスト教の「汝の隣人を愛せよ」(マタイによる福音書第5章第43~44節、第22章第39節)にも通じると思われます。すなわち、明治学院の開学の祖、初代総理のヘボン博士の後を受け、日本人として初めて第二代総理として、本学の礎を築いた、井深梶之助先生が、「汝の隣人を愛すことで、個人の人格の価値が尊重され」、「貧富、貴賤、賢愚の差別なく、各人に貴重な人格があり、各人はそれぞれ神から使命が与えられており、これを成就すべき義務と責任を負っている」(星亮一『井深梶之助伝』〔平凡社、2013年〕253~254頁)との教えにも相通ずるものです。新入生の皆さんが、本学法学部において、こうした真の法の意味を理解し、本学建学の父の教えをもとに、社会で活躍する素地を養うことを期待いたします。