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2019年度 法学部卒業生への祝辞

お知らせ

 法学部長の今尾真です。

 今年度は、新型コロナウィルス感染症の影響拡大に伴い、大学として、卒業式典、卒業証書・学位記授与式、卒業記念食事会等、全てを中止としました。関係する皆さまの健康面、安全面を考慮し、感染防止・リスク回避のため、苦渋の決断です。卒業生および保証人の皆さまにとっては、大学生活の締めくくりとして、最後の晴れ舞台を大変楽しみにしておられたと思いますが、このような事情をご理解いただき、ご海容くださることをお願い申しあげます。

  そこで、皆さんには、卒業を祝して、法学部教員を代表して、インターネットによる祝辞と餞を配信させていただきます。

 卒業生の皆さん、明治学院大学法学部のご卒業、誠におめでとうございます。

  また、保証人の皆さまにおかれましては、ご子息・ご息女のご卒業を、心よりお慶び申しあげます。  

 さて、皆さんは、法学部において、本学の建学の精神であるキリスト教主義の教え、「Do for Others(他者への貢献)」の理念に則り、自由清新な学風 ・ 雰囲気が大学全体に漂っている、この明治学院大学で、建学の理念の具体化である「自由・平等・正義と社会貢献を尊ぶ精神」を、法学や政治学を通して学びました。すなわち、社会のルールや仕組みについて学び、それらを使いこなす知識と思考力・判断力を身につけ、「気概」と「志」をもって、社会に貢献できる能力を修得したわけです。世の中が変わっても、このような能力を有した人材は時代を超えて求められます。

 そして、この「自由・平等・正義と社会貢献を尊ぶ精神」は、卒業する皆さんの身体や心の中に自然に染みこんでおります。こうした学問と本学の精神および法学部の学風は、皆さんがこれから出て行く社会において、きわめて貴重な財産となるでしょう。わたしとしては、皆さんが、このように本学法学部で学んだことに、自信と自負をもって世の中で活躍されることを大いに期待しております。

 ところで、2019年度の日本や世界の出来事を振り返ってみますと、ラグビーW杯日本大会開催で日本が8位と健闘し日本中を湧かせたこと、リチウムイオン電池を開発した吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞したこと、ゴルフの渋野日向子氏が全英女子オープンで日本人2人目となる海外メジャー優勝という快挙を成し遂げたことなど明るい話題に包まれた反面、ノートルダム大聖堂の大火災やアマゾン・オーストラリアなどで森林火災が多発したこと、京都アニメーション放火により多数の死傷者が出たこと、東日本で台風大雨による死傷者多数の被害が発生したこと、沖縄首里城が焼失したことなど、悲しい出来事も報道されました。また、政官界・実業界においても、多くの不祥事・不可解なことが起こった年でもありました。例えば、選挙違反等による相次ぐ閣僚の辞任、首相の「桜を見る会」の問題、英語民間試験の導入見送り、米中貿易紛争の先鋭化、名だたる企業の元会長兼CEOの海外逃亡といった問題・事件が世間を騒がせました。特に、不祥事の背景には、社会におけるコンプライアンス(遵法)ないし法を尊び正義を実現しようとの意識が希薄化し、社会で中核として活躍している人たちの感覚が痲痺しているといったことがあるのではないかと思います。

  これから、皆さんは、社会に巣立っていくわけですが、不正・違法な場面に直面することがあるかもしれません。そのときには、本学で学んだことを思い出してください。「自由・平等・正義と社会貢献を尊ぶ精神」です。そして、「正義」・「公平」・「平等」・「弱者救済」の見地から、賛成できない場面に直面したときに「声」をあげる勇気―「これはおかしい」、「反対である」―というように、自分の考えや信念に抵触する場合には、時に、上司・同僚に対して、時に、権威や権力、そして社会に対して、「声」を出す勇気をもって欲しいということです。時流や世評に流されず、「独立・自由であるべき」ということです。これぞまさしく、明治学院大学法学部が目指す、「独立した自由な精神」を前提としたリーガルマインドであり、法学・政治学を武器に、「Do for Others」を具体化・実践する人材育成の帰結であります。

  最後に、卒業の餞として、近代日本の法体系の確立に尽力した、日本民法典の父ともいえる、ボワソナアド博士の言葉を贈ります。「法とは何か。それを一言でいえば『人を害するな』ということだ」。この意味は、一人一人の人間にかけがえのない人格的価値を認め、一人一人の人間が、いかなる権利をもち義務を負担するかを明らかにするのが、「法の使命」であるということです(大久保安甫『日本近代法の父 ボワソナアド』〔岩波書店、1977年〕186頁)。これは、キリスト教の「汝の隣人を愛せよ」(マタイによる福音書第5章第43~44節)にも通じると思われます。すなわち、明治学院の開学の祖、初代総理のヘボン博士の教えを受け、日本人として初めて第二代総理として、本学の礎を築いた、井深梶之助先生が、「汝の隣人を愛すことで、個人の人格の価値が尊重され」、「貧富、貴賤、賢愚の差別なく、各人に貴重な人格があり、各人はそれぞれ神から使命が与えられており、これを成就すべき義務と責任を負っている」(星亮一『井深梶之助伝』〔平凡社、2013年〕253~254頁)との教えにも相通ずるものです。こうした真の法の意味を理解し、本学建学の父の教えをもとに社会で活躍することを期待いたします。

  卒業、おめでとうございます。  

    2020年3月13日

法学部長

今尾  真