2022年度 法学部・法と経営学研究科入学式における法学部長祝辞
法学部長の今尾真です。
新入生の皆さん、明治学院大学法学部並びに法と経営学研究科にご入学、おめでとうございます。
また、保証人やご家族の皆さまには、ご子息、ご息女の本学へのご入学、心よりお慶び申しあげます。
現在も、いまだコロナ禍が収束せず、入学式も、チャペルとパレットゾーンに分かれての分散開催、保証人の皆さまの大学への入構制限といった措置を執らざるを得ませんでした。関係する皆さまの健康面、安全面を考慮し、感染防止・リスク回避のため、大学として苦渋の決断であります。新入生および保証人の皆さまにとっては、大学生活の出発として、最初の晴れ舞台を大変楽しみにしておられたと思いますが、このような事情をお汲みくださり、ご海容のほどお願い申しあげます。
さて、法学部を代表して、一言、お祝いの言葉を述べさせていただきます。
法学部および大学院では、本学の建学の精神であるキリスト教主義の教え、「Do for Others (他者への貢献) 」の理念に則り、法学や政治学および経営学の教育を行っております。
学生が社会に出たとき、正義・公平・弱者救済の見地から賛成できない場面に直面したとき、「声」をあげる勇気をもった人材の育成を目指しております。そのために、法学や政治学および経営学をとおして、社会のルールや取引の仕組みについて学び、それらを使いこなす知識と思考力・判断力を身につけることを教育目標としております。つまり、こうした能力を駆使して、「気概」と「志」をもって社会に貢献できる人材を養成しているというわけです。世の中が変わっても、こうした人材が求められることに変わりはありません。実際、本学法学部の卒業生は、民間企業、公務員・NPO・政界、法曹・士業、自ら起業をするなど、様々な分野で活躍しています。皆さんも、こうした先輩達に続くべく、大いに学問に励んでください。
そこで、本日は、皆さんの入学に際し、アメリカ連邦最高裁判所判事で、社会学的法律学者としても著名なカードーゾという学者の言葉を引用し、これからの学業の指針としていただきたいと思います。
カードーゾは、彼の名著『法の成長』(守屋善輝訳〔中央大学出版部、1965年〕)の冒頭で、次のような言葉を述べております。“法は安定していなければならない”、しかし、“法は常に変化しなければならない”、安定と変化のバランスをいかにとるか、これが法および法律家に課せられた永遠の課題であると。
この言葉は、わたくし非常に好きな言葉で、入学式で毎年述べております。バランス感覚の大切さを説くこの言葉は、法および法律家にとっての指針であるばかりでなく、まさにこれから法学や政治学・経営学を学び始める学生にとっても、こうした視点をもって学業に励むことは非常に重要だと思います。バランス感覚を養ってください。しかし、このバランス感覚が大切であることはもちろんですが、そこに、その人自らの心、信念を注入しなければなりません。信念を持つことを法学部または大学院で修得してください。
ところで、ここにいる大部分の皆さんは、高校を卒業したての18歳、19歳の若者だと思います。皆さんもご承知のとおり、昨日、4月1日から、民法という法律が130年ぶりに改正されて、しかし実はそれより前の明治9年の太政官布告で20歳を成年としていたので、正確には146年ぶりの改正となりますが、18歳が成年、すなわち“大人”として取り扱われるということになりました。このことは、18歳から親の同意なく一人で有効な契約を結ぶことができますし、自分の住む場所、進学、就職などを決めて、その責任をとるということを意味します。自分一人で物事を判断できるか不安という人もいるかもしれません。しかし、世界的にも成年年齢を18歳とするのが主流となっております。世の中は、皆さんを一人前の大人として取り扱うということになります。このことを肝に銘じて、これらからの4年間を自覚と責任をもって過ごすようにしてください。もし、判断に迷ったら、いろいろな人に相談してみるのもよいでしょう。18歳は若すぎると思うかもしれませんが、これまでの知識を活かして、社会で経験を積みながら成長してください。
さて、皆さんは、多くの人に支えられ、今、“大人”としてこの入学式を迎えられているわけです。そこで、今日一日は、特に、皆さんのお父さん、お母さんに対して、「大人になるまで育ててくれてありがとう」という、感謝の気持ちをもって、過ごしてください。
大学の4年間また大学院の2年間は、長いようで短い時間です。この間に、「自分をどう磨き、光らせるか」は、皆さん次第です。将来を見据えて大学生活を有意義に送ってください。あらゆる可能性が皆さんの前に広がっております。あらためて、ご入学、おめでとう。 終わります。
2022年4月2日
法学部長 今尾 真
パレットゾーンの様子