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2022年度 法学部卒業生・大学院修了生への祝辞

レポート

法学部長の今尾真です。 

卒業生・修了生の皆さん、明治学院大学法学部、大学院「法と経営学研究科」の卒業・修了、誠におめでとうございます。また、保証人の皆さまにおかれましては、ご子息、ご息女のご卒業または修了を、心よりお慶び申しあげます。

現在も、いまだコロナ禍が収束しておりませんが、本年度は、このチャペルにて、大幅に制限を緩和して、従来のような形で卒業式・修了式を挙行できたことを大変嬉しく思います。

さて、皆さんに対し、法学部を代表して一言お祝いの言葉を述べさせて頂きます。

皆さんは、明治学院大学の建学の精神であるキリスト教主義の教え、「Do for Others(他者への貢献)」の理念に則り、自由清新な学風 ・ 雰囲気が漂う法学部および大学院で、建学の理念の具体化である「自由・平等・正義と社会貢献を尊ぶ精神」を、法学、政治学および経営学などの学問を通して学びました。すなわち、社会のルールや政治・取引の仕組みについて学び、それらを使いこなす知識と思考力・判断力を身につけ、「気概」と「志」をもって、社会に貢献できる能力を修得したわけです。世の中が変わっても、このような能力を有した人材は時代を超えて求められるものであります。

ところで、皆さんが在学した4年間を振り返りますと、3年間はコロナ禍が猛威を振るい、個人の行動・移動制限が課されるとともに、2年次・3年次は在宅でのオンライン授業を強いられるなど、大学生活の醍醐味の多くが失われました。また、社会では、多数の犠牲者を出し、人と人との交流が閉ざされ、経済活動の停滞は、多くの失業や経済的困窮を生み、世の中が殺伐として格差の拡大をもたらしました。

さらに、世界に目を転じると、独裁的な指導者が増え、その言動や政策がマスコミ報道を賑わせております。特に、ロシアによるウクライナ侵攻は、その最たるもので、すでに1年以上にもわたり多くの人々が苦しんでおります。

皆さんは、このような状況の中で、学生生活を送り、そして今日、大学・大学院を卒業・修了し、社会に出るわけです。なかなか周りの人のことを思いやる余裕がなかった、また今後もしばらくはないかもしれません。しかし、このようなときにこそ、キリスト教の教え、「汝の隣人を愛せよ」(マタイによる福音書第5章第43~44節、第22章第39節)を思いだし、実践してください。

明治学院の開学の祖、初代総理のヘボン博士の後を受け、第二代総理として、本学の礎を築いた、井深梶之助先生が、「汝の隣人を愛すことで、個人の人格の価値が尊重され」、「貧富、貴賤、賢愚の差別なく、各人に貴重な人格があり、各人はそれぞれ神から使命が与えられており、これを成就すべき義務と責任を負っている」と説いております(星亮一『井深梶之助伝』〔平凡社、2013年〕253~254頁)。

これは、近代日本の法体系の確立に尽力し、日本民法典の父ともいえる、ボワソナアド博士の教えにも通じるものと思います。博士は、「法とは何か。それを一言でいえば 『人を害するな 』 ということだ」と述べております。この意味は、一人一人の人間に、かけがえのない人格的価値を認め、一人一人の人間が、いかなる権利をもち義務を負担するかを明らかにするのが、「法の使命」である、ということです(大久保安甫『日本近代法の父 ボワソナアド』〔岩波書店、1977年〕186頁)。 ここにおいて、まさに、キリスト教の教えと「法の使命」が一致したというわけです。

皆さんが、本学法学部・大学院において、こうした真の法の意味を理解し、本学建学の父の教えをもとに、社会で活躍することを期待いたします。卒業・修了、おめでとう。 終わります。

 

2023年3月17日

法学部長  今尾  真