2023年度 法学部・大学院法学研究科入学式における法学部長祝辞
法学部長の今尾真です。
新入生の皆さん、明治学院大学法学部並びに大学院法学研究科にご入学、おめでとうございます。
また、保証人やご家族の皆さまには、ご子息、ご息女の本学へのご入学、心よりお慶び申しあげます。
さて、法学部を代表して、一言、お祝いの言葉を述べさせていただきます。
法学部および大学院では、本学の建学の精神であるキリスト教主義の教え、「Do for Others (他者への貢献) 」の理念に則り、法学や政治学の教育を行っております。
学生が社会に出たとき、正義・公平・弱者救済の見地から賛成できない場面に直面したとき、「声」をあげる勇気をもった人材の育成を目指しております。そのために、法学や政治学をとおして、社会のルールや政治の仕組みについて学び、それらを使いこなす知識と思考力・判断力を身につけることを教育目標としております。つまり、こうした能力を駆使して、「気概」と「志」をもって社会に貢献できる人材を養成しているというわけです。世の中が変わっても、こうした人材が求められることに変わりはありません。実際、本学法学部・大学院の卒業生・修了生は、民間企業、公務員・NPO・政界、法曹・士業・研究者、自ら起業をするなど、様々な分野で活躍しています。皆さんも、先輩達に続くべく、大いに学問に励んでください。
毎年、入学式では、次の言葉を新入生に贈っております。
アメリカ連邦最高裁判所判事で、社会学的法律学者としても著名なカドーゾという学者の言葉です。
カドーゾは、彼の名著『法の成長』(守屋善輝訳〔中央大学出版部、1965年〕)の冒頭で、次のような言葉を述べております。“法は安定していなければならない”、しかし、“法は常に変化しなければならない”、安定と変化のバランスをいかにとるか、これが法および法律家に課せられた永遠の課題であると。
この言葉は、わたくし非常に好きな言葉で、バランス感覚の大切さを説くこの明言は、法および法律家にとっての指針であるばかりでなく、まさにこれから法学や政治学を学び始める学生にとっても、こうした視点をもって学業に励むことは非常に重要だと思います。バランス感覚を養ってください。しかし、このバランス感覚が大切であることはもちろんですが、そこに、その人自らの心、信念を注入しなければなりません。信念を持つことを本学の学びの中で修得してください。
それから、もう一つ、わたしのささやかな経験から、皆さんに伝えたいことがあります。それは、物事をやり通すということです。勉強でも、部活動でも、ボランティアでも何でも構いません。自分で目標を定めて、“やると決めたら、やり通す”ということです。やってみたけれども、“きつい”、“しんどい”、“自分には無理だ”と諦めずに、自分を信じてやり通すということが大切です。やり通した先に、別の風景が見えてきます。また、やり通した人だけが持つことのできる自信が、次の課題の突破や目標の達成に、大きな力となるということです。こうしたやり抜く力を大学生活の中で修得してください。
最近、このようなことを述べている、世界チャンピオンの元プロボクサーで高校教員を目指している高山勝成さんの新聞記事(毎日新聞2023年3月26日付朝刊1面)を読んで、わたしも同感したところです。彼によると、「才能、IQ(知能指数)、学歴ではなく、個人のやり抜く力が社会で成功を収める大きな要素」だと語っております。これは、アメリカの心理学者が提唱したGRIT理論というそうですが、グリットのGはGuts(ガッツ=根性・勇気)、RはResilience(回復力)、IはInitiative(自主性・主体性)、TはTenacity(粘り強さ・不屈)の略称です。難しいことはさておき、昔の古い歌にもありますように、「やると思えば どこまでやるさ」(作詞:佐藤惣之助、作曲:古賀 政男『人生劇場』〔早稲田大学第二校歌〕)、やり抜く力を培ってください。
大学の4年間または大学院の2年間・3年間は、長いようで短い時間です。この間に将来を見据え、「自分をどう磨き、光らせるか」は、皆さん次第です。その際、「安定と変化のバランスをいかにとるか」を指針とし、「物事をやり抜く力」を身につけることを意識してください。
あらゆる可能性が皆さんの前に広がっております。あらためて、ご入学、おめでとう。
2023年4月1日
法学部長 今尾 真
チャペルの様子
法律学科の学科ガイダンスの様子
消費情報環境法学科の学科ガイダンスの様子
政治学科の学科ガイダンスの様子