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教員インタビュー

STORY

社会に出てから能動的な市民として活躍するための、またとない訓練の場

政治学科所属

いけもと だいすけ
1974年7月19日生まれ。東京大学法学部卒業後、オックスフォード大学政治国際関係学部から博士号(Ph.D)を取得。専門はヨーロッパ統合・ヨーロッパ国際関係史・イギリス政治。イギリスとフランスがヨーロッパ通貨統合に対照的な態度をとるようになった理由について研究している。

1. 先生が研究者になろうと思ったきっかけにはどのようなことがありますか?

大学1、2年生の頃は実は外交官になろうと考えていました。1学年上の先輩に「おまえは将来何になりたいと思っているのか」と聞かれて「外交官です」と答えたところ、「外交官の仕事がどういうものだかわかって言っているのか」と一喝され、その日を境に外交官になる気はきれいさっぱりなくなりました(笑)。在外勤務中の若い外交官は、日本から外遊に来た政治家の案内をして回るような、およそ外交とは関係のない仕事もこなさなければならないことがわかっていなかったのです。もっとも、どんな職業でもやっていて楽しいことと楽しくないことは必ずあるはずですが。それはさておき、研究者の仕事の魅力というのは、物事を一歩離れたところから掘り下げて考えるところにあり、自分にはそれがあっていたということだと思います。

2. 今のご研究はどのような内容ですか?

イギリスがヨーロッパ統合に対して消極的である理由、特にEU(欧州連合)の単一通貨ユーロに参加しないのはなぜかという問題を研究してきました。これは大変奥の深い問題で、安全保障上深いつながりのあるアメリカや、歴史や文化を共有するオーストラリア・ニュージーランド・カナダのような英語圏の国々との関係の方が、大陸ヨーロッパ諸国とのそれより重視されてきたこと、金融業を中心とするイギリスの経済構造、さらにはウエストミンスターモデルと呼ばれる、与野党間の活発な議論を重視する政治スタイルなど、様々な要因が関わっています。一つの国の政治を本当に理解するためには、選挙や議会といった狭い意味での政治現象・制度だけをみるのでなく、その国の歴史や文化、経済や社会のあり方を総合的に踏まえた分析が不可欠です。

3. ご専門の科目ではどのようなことが学べますか?また、これを学ぶとどのようなことがわかるようになりますか?あるいはどのようなことをわかってほしいですか?

私は「国際政治学」と「国際組織論」という科目を担当しています。国際政治学という学問は、第一次世界大戦後、戦争が起きる原因を体系的に探求するために生まれました。二度と戦争を起こしてはならないという人々の思いがその背後にあったのはいうまでもありません。ですから国際政治学の授業では、日本も含めた世界各国が平和的に共存していくための条件・方法について考えることになります。その中でも有力な立場として、平和を維持するためには国際組織を樹立すればよいという考え方があります。そこで「国際組織論」の授業では、そのような組織の代表例であるEUや他の地域機構について学びます。

戦争や平和というと大きな問題すぎて、国際政治は自分には縁遠いと感じる方もいるかもしれません。しかし最近では、日本を取り巻く国際環境が私たちの社会や生活のあり方を大きく左右するようになってきています。これは1980年代以降の世界で、人・モノ・カネ・サービスが国境を越えて動き回るグローバル化と呼ばれる現象が進展しているためです。これは私たちにとって大きなチャンスであると同時に、競争の激化や、一国で起きたことが他の国に波及しやすくなるといったリスクも伴っています。国際社会が今後どのような方向に進もうとしているのか学び、それが日本にどのような影響をもたらすのか、日本はどのような働きかけを他の国にしていくべきか考えることも、国際政治学にとって大切な課題の一つです。

4. ゼミではどのようなことを学んでいますか?

ゼミでは、国際政治学や国際組織論の授業で学んだ基本的な分析枠組みを踏まえた上で、それぞれの学生が興味を持っている時事的な問題について、2,3人のチームを組んで発表してもらうようにしています。昨年度は集団的自衛権や難民危機などを扱いました。

5. 先生が考える政治学科のアピールポイントは何でしょうか?あるいは高校生に向けて何かメッセージをお願いします。

政治学という学問の魅力は、先にも述べたように、歴史や文化、経済や社会にまたがる総合性にあると思います。そう言うとなんだか偉そうに聞こえるかもしれませんが、西欧的な学問の発祥の地である古代ギリシャでは、実際に政治学は学問の王様だと考えられていました。しかし政治学は総合的な学問だと聞いて、それでは経済学や社会学とどう違うのかと思った方もいるかもしれません。政治学のもう一つの特徴は、社会全体に関わる問題について考えるという点にあります。例えば、銀行が家を買う人にお金を貸したとします。これは基本的にはお金を貸した側と借りた側だけに関わる問題ですから、経済学の対象ではあっても政治学の対象ではありません。しかし最近の世界的な経済危機のように、借りたお金を返せない人がたくさん出てきて、そのままでは銀行がどんどん潰れ経済が崩壊しかねないという場合には、社会全体に関わる問題ですので政治学の対象になります。

政治というと、日本では政治家や官僚、マスコミといった一部の人たちだけの問題だという意識が根強くありますが、そのような考え方は民主的な社会にはふさわしくありません。民主的な社会では、社会全体に関わる問題について、その構成員である私たち1人1人が考え、積極的に関わっていくべきだからです。

明治学院の政治学科の最大の魅力は、その徹底した少人数教育にあると思います。少人数教育を謳う大学は多いですが、ゼミや一部の授業が少人数であっても多くの授業が大教室で行われているのであれば、それは少人数教育と呼ぶには値しません。その点、明治学院の政治学科は1学年が140名程度ですから、同学年であればほとんどの学生は顔見知りですし、真の少人数教育です。これは単にきめの細かい教育が可能だということだけでなく、学生が自発的に様々な活動を行うことを可能にするという点で、政治学科にとって極めて重要な意味を持っています。様々な企画を自分たちの手で行うことは、社会に出てから能動的な市民として活躍するための、またとない訓練の場を提供してくれるのではないでしょうか。